デジタル音声処理回路技術の発展と普及により様々なオーディオ製品がデジタル化されていますが、これらの機器の音声入力端子の部分にはAD(アナログ→デジタル)変換回路が、出力端子部分にはDA(デジタル→アナログ)変換回路を備えていて、最初と最後には必ずアナログ音声回路が必要なわけです。 そこで今回はデジタルオーディオ信号のレベル基準である0dB(デシベル)と、アナログ信号レベルの0dB基準レベルについての意識を明確にするために、これらの相違点を整理しておきたいと思います。
ミキシングコンソールやオーディオレコーダーなどのオーディオ機器には、規定入力レベルや規定出力レベルを表示する、バーグラフメーターや針式メーターが備えられています。これらのメーターには必ず0dBレベルの位置が判るように目盛りが付いています。そして0dB目盛りを超えると表示は赤色に変わり、0dB目盛り以下のレベル表示と判別できるようになっています。これは0dBを大幅に越えたレベルでは音がクリップして割れたり歪んでしまう危険があるので、赤色で表示することでレベルを監視し易いようになっているのです。。(第2図参照)
それでは、どの程度まで0dB以上のレベルになっても大丈夫なのでしょうか? このように0dB以上のレベルにどの程度の余裕があるかということを、「XXdBのヘッドルームがある」と表現します。つまり「0dBレベルに対して歪まないで、頭上にあるレベルのゆとり」がヘッドルームです。プロ用機器のLINE入力の場合は24dB(16倍)以上のヘッドルームを持たせていますが、通常は20dB前後あれば十分でしょう。このようにアナログ機器の入出力端子の規定レベル(0dB)はヘッドルームを考慮した上で設定されているのです。
これに対して、デジタルオーディオ信号の0dBレベルの規定は少し状況が異なっています。それはデジタルオーディオの0dB以上には信号がありません、言い換えるとヘッドルームが全くありません。それはつまり最大レベルを0dB(Digital Maximum Cording Level)と規定しているためです。そしてデジタルオーディオの最大レベルは0dBFSと表現しています。
アナログオーディオ回路の場合は最大レベルに近づくと徐々に波形が歪みはじめて最後に波形の頭が平らにクリップしますが、デジタルオーディオの場合は0dBFSを超えた瞬間からクリップしてしまうわけですから、デジタルオーディオの記録時には絶対に0dBFSを超えないように注意が必要です。
それでは、デジタルオーディオ信号を扱う機器のヘッドルームはどのように設定されているのでしょうか?それはアナログオーディオ機器の場合と違って、0dBFSから必要なヘッドルーム分だけ低いレベルのポイントを基準に設定して、音楽などを記録することで対応しているのです。(第1図参照)
このようなデジタルオーディオの基準レベルは世界各国によって規定がありますが、基本的には0dBFSより20dB低いレベルポイントが基準(SMPTE、NAB)になっています。この基準レベルはダイナミックレンジの広い、クラシック音楽などの記録再生を想定したものなので、現実的には記録する音楽のジャンルや種類、使用メディアなど状況によって-18dBFS、-16dBFS、(-12dBFS)などの基準レベルを選択しています。

以上のようにデジタルオーディオ機器の内部は、デジタル回路とアナログ回路の組合せによって構成されているので、特にアナログ入力レベル調整VR以前の、回路ヘッドルーム設定は、デジタルオーディオ回路の最大レベルに対して十分にゆとりがあるように考慮されていなければなりません。またアナログ出力回路についても、デジタルオーディオの最大出力レベル0dBFSから設定したデジタルオーディオのヘッドルーム分を考慮して、アナログ規定出力レベルに対して十分なヘッドルームが設定されている必要があるわけです。
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